kozyd’s blog

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⭐️4つ『時は乱れて』P.K.ディック

ディックの『時は乱れて』を読みました。相変わらず表紙かっこいい😎

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舞台は1950年代後半のアメリカの郊外。序盤は牧歌的というか、戦後アメリカの中流階級の暮らしぶりがうまく描かれていて、雰囲気あってよかったです。夕方になると、お隣さん夫婦がラザニア片手に訪問してきたり、一緒にポーカーやったり、ボーリングに誘われたり、「また来た、あの人たち。もう、うんざり」みたいな愚痴を言いつつ笑顔で出迎えたり……この本が書かれたのは1959年だから、本当にこんな感じの交流があったんだろうな(そういや、昔のアメリカのホームコメディでもこういうのはよく見たっけ)。

それはともかく、序盤はぜんぜんSF感がないこともあって、むしろ「このあと何が起こるんだろう」という期待が持てたのでよかったです。

中盤からは、案の定、雲行きが怪しくなるんだけど、それでも1950年代感は維持しつつ、話はズンズン進んでいき、街からの脱出劇やら何やらあったりして、結構サスペンスフル。SF要素を出さずに読者を惹きつける力は流石はディックですな。先が気になって仕方なく、快速で読めましたよ。

終盤になってようやくネタバレ。実はあなたの住む世界は嘘っぱちで、本当はかくかくしかじか、その理由は◯◯でしたー! って感じになるんだけど、個人的にはもう少しページを割いて丁寧に書いてほしかったかな。アイデアは悪くないけど、何かこう「ああ、残りページ数が少ない! てかもう書くのだるいわ。終わらせよー、おりゃー!」(と作者が言ったかどうか定かではないけれど)感があって、急速に話が終わってしまい、まるで美しい花が咲いた途端に萎んでしまうような、もったいない印象でした。

とはいえ、ディック初期の名作として納得のデキだったので読んで損はないかな。

ということで、勝手に星4つ付けさせていただきます⭐️⭐️⭐️⭐️٩( ᐛ )و

最近ディック熱が沸騰中なので、熱いうちに別の作品も読もうかな。